会員企業様インタビュー
SMC 株式会社

「正解がないからこそ、つながる意味がある」—SMCが見た環境デジタルプラットフォームという羅針盤 

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写真:左からエコファクトリー推進室 尾藤様、山口様
コーポレートコミュニケーション室 佐藤様

SMC株式会社

会社概要 1959年に設立。空気圧機器をはじめとする自動制御機器の総合メーカーとして、グローバルに事業を展開。国内外に製造・販売・技術サポートのネットワークを持ち、あらゆる産業の自動化・省力化・環境対応を支える製品とソリューションを提供されています。
同社ではサステナビリティ推進の一環として、環境への取り組みを加速させるべく、2024年よりコニカミノルタの「環境デジタルプラットフォーム」(以下「環境DPF」)に参加。今回は、実際に環境DPFを活用しているエコファクトリー推進室のご担当者様に、導入の背景や具体的な活用法、得られた成果や今後への期待についてお話を伺いました。

目次
1.実務視点のESG推進を支える“使える情報”との出会い
2.“点から面”へ。組織を動かす発想と共感の連鎖
3.環境DPFに対するご要望や現在の課題など
4.これから利用を検討される企業様に向けたメッセージ

1.実務視点のESG推進を支える“使える情報”との出会い

ーーー御社の環境・サステナビリティに関する取り組みについて教えていただけますか?

山口様
当社では、サステナビリティ全般に関わる取り組みを全社横断で進めており、私たちエコファクトリー推進室はその中でも製造本部に属し、工場側の省エネルギー施策や環境対応を具体的に推進する立場にあります。エコファクトリー推進室が部署として立ち上がったのは2021年12月で、私は2024年6月から室長として携わっています。工場のエネルギー使用状況を可視化したうえでの施策立案と、その実行支援などを行っています。製造現場ではさまざまな設備が動いていますが、それらの消費エネルギーをどう最適化するか、どうCO₂削減につなげるかを現場とともに考えるのが我々の役割です。

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佐藤様
エコファクトリー推進室は、会社のサステナビリティ方針と現場の実情とをつなぐ“橋渡し”の役割を担っているとも考えます。特に近年は、ESGやGHG(温室効果ガス)の情報開示に対する社会的な要請が急速に高まり、社内においてもその対応が重要なテーマとして認識されるようになってきました。
とはいえ、エコファクトリー推進室の役割としては、ルールや基準を作るのではなく、それらをいかに乗りこなしていくかという視点で捉える必要があります。日々の業務の中で変化し続ける外部環境に対して柔軟に対応しつつ、現場で無理なく実行可能な形で施策として落とし込んでいく。そうした現場起点の実行力が、これからのサステナビリティ推進において求められてくると感じています。

ーーー環境DPFに参加したきっかけをお聞かせください

山口・佐藤様
最初にこのプラットフォームに関心を持ったきっかけの一つは、営業的な視点からだったと聞いています。「環境」というテーマを軸に、当社の製品や技術を紹介するきっかけになるのではないか、という期待がありました。実際、環境やサステナビリティの取り組みが企業価値の一部として見られる今、営業活動の中でも「どんな環境対策をしているのか?」と聞かれる機会が増えており、それに応えるための“語れる引き出し”を増やしたいという考えがありました。

そして、もう一つの大きな理由は、会社としてESGやGHGの対応を本格的に進める中で、「どこから情報を集めて、どう方針を立てればいいのか」が非常に不透明だったことです。サステナビリティ関連の情報は多いのですが、実務の現場では抽象的すぎて、具体的に何をどう進めればいいか手探りの状態でした。そうした中で、コニカミノルタさんの環境DPFをご紹介いただき、「これは現場に近い視点で役に立つ情報が得られそうだ」と判断され、参加に至ったという経緯です。

尾藤様
実際に参加してみて感じたのは、「環境DPFは、単なる情報提供の場ではなく、企業同士をつなぐ“シナプス”のような存在——つまり、情報や気づきが行き交い、思考が活性化する場としての価値を実感しています。」各社の実践事例や悩みが交差することで、新たな気づきが生まれています。ESGやサステナビリティの取り組みには正解がなく、企業ごとに課題や環境が異なるため、他社のリアルな状況を知ることが、自社の方針を決めるうえで非常に有効だと感じますね。

ーーー環境DPFはどのような点が御社の課題解決に役立ちましたか?

山口様
環境DPFに参加して最も効果を感じているのは、「実務に役立つ生の情報」が得られるという点です。外部のセミナーやウェビナーでは、タイトル上は魅力的でも、実際には抽象的で一方通行な内容が多く、期待していた情報が得られないことも少なくありません。その点、環境DPFでは他社がどのような課題に直面し、どのように対応してきたのかという“リアルな声”に触れることができるため、非常に参考になっています


尾藤様
当社は環境・サステナビリティ対応に本格的に取り組み始めたばかりであり、当初は「自分たちのやっていることが正しいのか」「他社と比べて進んでいるのか、遅れているのか」といったことすら判断がつかない状態でした。そのような中で環境DPFに参加したことで、自社の立ち位置を客観的に見つめ直す大きなきっかけになりました。他社の事例や進捗状況に触れることで、「自分たちは今どの段階にいるのか」「何に取り組むべきか」といった方向性のヒントを得ることができたと感じています。

同じような課題を抱えている企業が他にもあると知るだけでも安心感につながりますし、すでに先を進んでいる企業の実践からは、非常に具体的な学びを得ることができます。そうした意味で、環境DPFは、当社にとって“実務の羅針盤”として、今後の取り組みを考えるうえで欠かせない存在になっています。

ーーー環境DPFで得た気づきは、社内の考え方や取り組み姿勢にどのような影響を与えましたか?

尾藤様
環境DPFで得られた知見は、単なる情報の蓄積にとどまらず、社内の思考の幅を広げるきっかけとなりました。他社の取り組みを知る中で、「自社でも応用できるのではないか」「当社なりの工夫を加えれば、より良い施策につながるのではないか」といった発想が自然と湧いてくるようになったと感じています。

山口様
加えて、こうした発想の変化は、社外パートナーとの関わり方にも影響を与えています。以前は、提示された提案をそのまま受け入れる場面が多かったのですが、今では「その提案は本当に自社の課題に合っているか」「もっと良い選択肢はないか」といった視点を持って、自ら積極的に問いかけるようになりました。たとえばオフサイトPPAやグリーン電力の導入検討においても、供給の安定性や費用対効果を多角的に検討するようになったのは、環境DPFで培った“主体的に考える姿勢”が根づき始めている証だと捉えています。

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2.“点から面”へ。組織を動かす発想と共感の連鎖

ーーー参加後、社内ではどのような具体的な変化がありましたか?

尾藤様
環境DPFへの参加をきっかけに、取り組みの質にも変化が見られるようになりました。以前は、業務をこなすことで精一杯で、個々の施策を“点”として捉えることしかできませんでしたが、今では「この手法は当社全体にどう影響するか」「他の活動とどう連携できるか」といった“面”の視点から物事を捉え、まだ見ぬ景色を見に行こうという意識が芽生えるようになりました。

また、社内でのプロジェクトの進め方にも変化があります。例えば、これまで外部のコンサルタントに依存し、提案をもとに対応策を構築することが一般的でしたが、現在では、「本質的な課題は何か」「どのようなアプローチが有効か」といった初期設計の段階から、自社内で議論しながら方向性を定める体制が築かれつつあります。もちろん専門的な知見は引き続き外部の力も借りていますが、意思決定の前段階において“自分たちの言葉で考える”という思考が芽生え始めたことは、大きな前進だと考えています。

山口様
社内浸透という観点では、まだ道半ばですが、確実に変化の兆しはあります。たとえば、お客様から「SMCではどんな環境施策をしていますか?」と聞かれることが増え、私たちが前に出て説明する場面も出てきました。こうした外部からの関心が、社内にとっても“環境への取り組みの重要性”を再認識させるきっかけになっていると感じています。

ただし一方で、「環境のことはエコファクトリー推進室の担当でしょ」と捉える社員もまだ一部に存在しており、全社的な意識の共有という面では課題も残っています。環境対応は一部門の責任ではなく、会社全体の課題であるという認識を、どう自然に広げていくか。今後はその点にも注力していきたいですね。

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3.環境DPFに対するご要望や現在の課題などあれば教えてください

山口様
環境DPFには日頃から大きな助けをいただいており、満足度も高く感じています。そのうえで、今後に期待したいのは「他社とのリアルな交流機会の充実」です。
たとえば、グループセッションやローテーション形式の対話など、交流のきっかけとなる仕組みがあれば、より一層、参加企業間の横のつながりが深まるのではないでしょうか。

特に環境DPFには、私たちのような立場では通常なかなか接点を持てない、業界をリードする企業も多く参加されています。だからこそ、そうした企業と直接対話できる機会には非常に大きな価値があり、継続的な情報交換や連携につながれば、DPF全体の有用性はさらに高まると考えています。

尾藤様
他社の方々とも、立場を超えてフラットに意見交換できるような、程よく肩の力を抜いた関係性が築けたら理想的だと感じています。そこから自然な情報交換や相談が生まれやすくなりますし、そうした雰囲気づくりができると、環境DPFの価値もさらに広がっていくのではないでしょうか。

4.これから利用を検討される企業様に向けたメッセージ

山口様
もし「ESG対応を始めたいけど、何から着手すればいいかわからない」と悩まれている企業様がいらっしゃるなら、まずは環境DPFに参加して、他社の事例やディスカッションを“聞くだけ”でも十分価値があると思います。実際、我々も最初は情報収集が目的でしたが、参加していく中で考え方が広がり、自社に引き寄せた施策を描けるようになっていきました。

環境DPFのファシリテーターの進行力も素晴らしく、限られた時間の中で要点を的確に整理してくれるので、インプットが非常に効率的です。ESGに関わる人材育成の観点からは、若手の担当者にもぜひ参加してもらいたいですね。「多角的な視点を持つこと」「対話から本質を引き出すこと」の重要性を体感できる、実践的な“学びの場”だと思います。

尾藤様
環境DPFは、単なるセミナーや勉強会とは違い、“生の声”が飛び交う場所です。展示会のような表面的な情報ではなく、企業が本音で語る課題や工夫、試行錯誤のプロセスが聞けるというのは、他にはない価値です。自社がどの位置にいて、どこを目指すべきかを相対的に見直せるので、方向性に迷っている企業ほど参加する意味があると思いますね。

たとえば「発信はしたくないけど、まずは情報を受け取りたい」というスタンスでも全然構わないと思います。まずは視聴者として一歩を踏み出すことで、想像以上に多くのヒントが得られるはずです。そして、興味が湧いてきたら、ワーキンググループや小規模ディスカッションに少しずつ関わっていけばいい。そんな“自然体で関われる柔軟さ”も、環境DPFの魅力だと思います。環境DPFは、情報を“受け取る場”から“つなげる場”へ。まだ見ぬ景色を見に行く仲間として、ぜひ一歩を踏み出してみてください。

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編集後記

今回のインタビューでは、SMC株式会社の皆様が環境デジタルプラットフォーム(環境DPF)を通じて得た気づきや変化を、非常に率直に語ってくださいました。「正解がないからこそ、つながる意味がある」という言葉に象徴されるように、他社との対話や実践知の共有を通じて、自社の取り組みを主体的に見直し、前進させていく姿勢は、環境DPFの価値をまさに体現していると感じます。
特に印象的だったのは、エコファクトリー推進室の2名の方々のみで、SMCという大規模なグローバル企業の気候変動対応(GHG・CDP・EcoVadis等)に関する実務作業を担っているという事実です。インタビューを通じてその運営実態を知ったとき、率直に「この人数でここまでの業務を回しているとは驚きだ」と感じました。今後、環境対応の重要性がさらに高まる中で、体制も自然と拡大していくことでしょう。そうした流れの中で、人材育成の面でも環境DPFをより一層ご活用いただけることを期待しています。

お客様プロフィール

1959年に設立。空気圧機器をはじめとする自動制御機器の総合メーカーとして、世界80以上の国と地域で事業を展開。あらゆる産業の自動化・省力化・環境対応を支える製品を提供し、グローバル規模で産業の発展に貢献している。

【所在地】〒104-0031 東京都中央区京橋一丁目5番5号
【代表者】代表取締役社長 高田 芳樹
【設立】1959年4月27日
【事業内容】
・空気圧機器をはじめとする自動制御機器製品の製造販売
【URL】https://www.smcworld.com/ja-jp/

環境デジタルプラットフォームについて

つながりを力に、環境経営課題に挑む
他社とこれまでの実践から学び、自社の未来を創る

環境経営課題に立ち向かう道のりは、暗い森の中を彷徨い歩くことに似ています。
独りでは困難な道のりですが、他社の知見や経験を道しるべとす
ると、進むべき道が見えてきます。

ここは環境活動に取り組む企業が集い、濃く生々しいリアルな事例や意見が交流できる場。
ここで得られるインサイトこそが、自社の次の一手を見つけるカギとなります。